「どうしてあんな簡単なことを間違えたんだろう」
「また同じミスをしたらどうしよう…」
ミスを引きずってしまう。
そのことでさらに集中力が下がり、またミスをしてしまう。
そんな悪循環の中で、自分に自信が持てなくなってしまう人は少なくありません。
実際、私のところに相談に来られる方の中にも、「失敗した自分が許せない」「上司や周りの評価が怖い」といった声を多く耳にします。
でも、そうした悩みの裏には、“ある思考のクセ”や“真面目さゆえのプレッシャー”が隠れていることも多いのです。
今回のコラムでは、
- なぜ「ミスが許せない」と感じてしまうのか
- どんな心のクセがその思いを強めてしまうのか
- そして、どうすれば少しずつ「自分を責めるクセ」から抜け出せるのか
そんな視点を、キャリア支援の現場で見えてきた気づきとともにお伝えします。
【1】ミスが許せない人の3つの思考パターン
「失敗が怖い」「また間違えたらどうしよう」そんな思いが頭から離れず、ミスを引きずってしまう人には、共通する“思考のクセ”があります。
キャリア支援やメンタル相談の現場でも、以下のようなパターンがよく見られます。

①「ミス=自分の価値を下げるもの」と捉えてしまう
「また失敗したら評価が下がる」「迷惑をかける自分はダメな人間だ」など、ミスを“その人自身の価値”と結びつけて考えてしまうパターンです。
本来、ミスは誰にでも起こるものですが、真面目で責任感が強い人ほど
「失敗する自分はダメ」
「一度のミスで信頼を失う」
と考えてしまい、自分の存在までも否定してしまう傾向があります。
②「次は絶対にミスできない」と自分に過剰なプレッシャーをかける
一度ミスをすると、「次こそは完璧にやらなければ」と気を張りすぎてしまう。
その結果、余計に緊張し、注意が分散し、また新たなミスをしてしまう──という悪循環にハマってしまうことがあります。
実際、「何度も確認しないと不安で仕方がない」
「夜もミスのことを考えて眠れない」など、
常に“失敗を防がなければ”という思考に縛られている方も少なくありません。
それほどまでに、「ミスしてはいけない」というプレッシャーは、心にも体にも大きな負荷を与えてしまいます。

③「一度のミスで信頼を失う」と思い込んでいる
とても多いのが、「1回のミスで終わりだ」と感じてしまう思い込みです。
特に、過去に厳しく叱られた経験がある人や、自己肯定感が低い人ほど「もう二度とチャンスは来ない」「信頼を取り戻せない」といった極端な不安を抱えてしまいがちです。
このような思考は、必要以上に自分を追い詰め、結果として仕事のパフォーマンスにも影響してしまいます。
【2】その思考の背景にある真面目さと恐れ
ミスを必要以上に引きずってしまう背景には、「性格的な傾向」と「過去の経験」が深く関わっています。
特に、責任感が強く、相手の期待に応えようと頑張ってきた人ほど、以下のような心理を抱えていることが多いです。
①「真面目で完璧を目指す」気質
真面目で優しい人ほど、誰にも迷惑をかけずに仕事をきちんとこなそうと頑張ります。
だからこそ、小さなミスも「大きな失敗」のように感じてしまい、自分で自分に厳しい評価を下してしまうのです。
このような方は、普段から「ちゃんとしなきゃ」「しっかりしなきゃ」と自分を律しているため、ミス=努力不足、自分の甘さ、というふうに感じてしまいがちです。
②「過去の叱責や否定」が残っている
過去にミスを強く責められた経験、失敗で否定された経験があると、その記憶が無意識のうちに「また同じことが起きるかも…」という恐れにつながります。
たとえば、
- 学生時代に「何でできないの?」と言われた
- 職場でミスをして、周囲から冷たくされた
- 相談できる人がいなくて、一人で抱え込んでいた
そんな過去がある人ほど、ミスへの恐怖や自己否定感が強くなりやすいのです。
③「信頼を失うのが怖い」という不安
特に職場では、ミス=信頼を失うことだと感じてしまう方も多いです。
「失敗したら、評価が下がる」
「自分が頼られなくなるかもしれない」
そんな恐れがあると、失敗を“許してはいけないもの”にしてしまい、必要以上に引きずる原因になります。
このように、ミスを引きずる背景には、単なる性格や能力の問題ではなく、「真面目さ」「過去の経験」「人との関係性に対する不安」が複雑に絡み合っていることが多いのです。
【3】自分を責めすぎないための、私に効果があった考え方
「もう失敗できない」
「次こそミスをしたら終わりだ」
かつての私は、毎日そんな思いを抱えて仕事をしていました。
上司から怒られるのが怖くて、必死に自分を律して、何度も確認を重ねていたのに、それでも小さなミスが出てしまう。
だから私は、自分が過去にしたすべてのミスを手帳に書き出して、毎朝電車の中で何度も読み返していました。
「今日は絶対にミスをしないように」
「同じ失敗は繰り返さないように」
そうやってプレッシャーをかけ続けた結果、ミスが減るどころか、逆に増えていったんです。
何度も努力したのに結果が出ない。そんな自分が情けなくて、無能だと感じて、ついには「こんな私はどこへ行っても通用しない」とまで思い詰めていました。
私を救ったのは、「ミスをしてもいい」と思い切ること
どうにかしようとがんばっても、どうにもならない・・・そう感じたある日、私はふと「ミスをしてもいい」と開き直ることにしました。
もちろん、無責任になったわけではありません。
ただ、私は「ミス=終わり」「失敗=見捨てられる」と思い込み、自分を監視し続けることに疲れ果てていたのです。
私は、自分のミスを数えるのをやめ、手帳で毎朝確認するのもやめました。
そして、「上司に怒られないように」ではなく、「自分の思うように仕事をする」と視点を切り替えたんです。
そうして、またミスが起きたら仕方ない。そのときはそのとき、と心の中でつぶやきながら、肩の力を抜いて仕事に向かうようにしました。
開き直ったら、ミスが減った
不思議なことに、そう思えるようになってから、自然とミスが減っていきました。
今思えば、私は仕事よりも「上司の期待に応えること」や「怒られないようにすること」にばかり気を取られていたのかもしれません。
でも、「この上司の期待に応えるのは、自分には無理だな」と諦めたとき、私はようやく自分を認められた気がしました。
何か月も頑張って、努力して、それでもうまくいかなかった。
だからもう、できない自分を責めるのではなく、「できないこともある」と認めようと思ったんです。
そのときから、ようやく私は「仕事そのもの」に集中できるようになり、余計な緊張が減って、自然とミスも少なくなっていきました。
この経験から、私は「できない自分を責めること」よりも、「できない自分をそのまま受け入れること」の方が、ずっと前に進めるということを学びました。

【最後に】
ミスをして落ち込んだり、自分を責めてしまうのは、それだけあなたが真剣に向き合っている証拠です。
責任感があるからこそ、失敗がつらい。
それでも、がんばっている自分を責めすぎないであげてください。
「完璧じゃなくても、大丈夫」そう思えるようになるだけで、心はずいぶん軽くなります。
できなかったことより、「今、できていること」に目を向けて、少しずつ、自分を信じていけますように。
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